最新号を電子メールで受け取るには、 マイアカウントにアクセスして、AEから電子メールを受け取るオプトイン登録が済んでいることを確認してください。

ターゲットに関する話題
AEの2007年第4四半期フラットパネル ・ニュースレターでは、お客様のプロセスで最も重要な部分であるターゲットに関するプロセス上の諸問題およびソリューションについて説明します。次の各項目では、ターゲット関連プロセス戦略、ならびに薄膜品質、スループット、収益性などの重要目標に対するその効果について説明します。
ターゲット寿命を延ばす
製造作業現場のコストを大幅に引き下げながらプロセススループットを向上させる方法のひとつは、ターゲットをこれまで以上に有効利用することです。ターゲットの寿命と利用率を伸ばすことによって、購入の必要があるターゲットの数が少なくなるとともに、ターゲットのクリーニングや交換に要する次のプロセスダウンタイムまでの製造時間を伸ばすことができます。
ターゲットの寿命を伸ばすには、次の2つの方法を取ると完璧です。そのひとつはターゲット品質をできるだけ長く良好な状態に維持すること、もうひとつはターゲット品質の劣化によって薄膜品質に生じるマイナスの影響をできるだけ長く防ぐことです。
ターゲット品質の維持
プレーナターゲットを使った典型的なマグネトロンスパッタリングプロセスでは、スパッタリングは「レーストラック」(ターゲット表面上の領域で接線方向磁場が最大になる部分)内に集中します(図1および図2)。

図1. レーストラック侵食パターンを示すプレーナパターン

図2. プレーナターゲット上のレーストラック侵食パターンの断面図
レーストラックの外側では、スパッタリングレートがずっと低く、酸化膜の形成を許してしまうことがあります(図3)。ITO(インジウムスズ酸化物)などのセラミックターゲットのスパッタリングでは、酸素がターゲット材料内にあるだけでなくチャンバ内にも入るために、酸化膜を形成しやすくなります。金属スパッタリングでは、チャンバリーク、または基板やキャリアのガス放出によって生じる水蒸気が原因で、酸素が存在している可能性があります。このように形成される酸化膜の領域はふつう、ノジュール(nodule)と呼ばれます。この種の酸化膜の領域には絶縁性があり、電荷の蓄積を許します。この薄膜は極めて薄いので、たとえ「低い」電圧でも電界が異常に強くなります。この電界が十分に強くなると、ターゲットの表面に破壊(アーク)が発生します。これらのアークによって放出された微粒子は、基板を損傷させます。電源装置のアーク制御機能が不十分または不備であれば、場合によっては、アークが消滅しない、またはアークの点火が続いて、ターゲット材料に損傷を与えることがあります。
図3. プレーナターゲットを使った典型的なマグネトロンスパッタリングプロセスでは、ターゲット表面上のスパッタリングレートが比較的低い領域で起こる小さな破裂によって微粒子が放出され、まだ十分に使っていないターゲット材料でも交換する必要が生じます。
DCパルシング を使えば、ノジュールが形成される可能性が小さくなり、ターゲット品質を長時間にわたって維持できるので、ターゲットを十分に使うことができます。このプロセス電力方式は、極性を定期的に反転することでターゲット表面に蓄積する電荷を除去し、誘電体の形成とアーク発生を抑えます。周波数が高いほど、誘電体表面からの放電がより頻繁に行われるので、ノジュールが形成される可能性は低下します。これによってターゲット寿命が伸びるだけでなく、基板の損傷を抑えることができます。
したがって、もしストレートDC電源を使っている場合は、AEのPulsar®アクセサリのようなDCパルシング製品の追加をご検討ください。新しいプロセスを設置しようとしている場合は、AE製品のPinnacle® Plus+のようなパルス電源装置の導入をご検討ください。パルスDC電源の利点について詳しくは、『フラットパネル・フォーカス』ニュースレター(2007年第2四半期)の「使用しているFPDプロセスにパルスDC電源が適しているかどうかは、どのように判断したらいいでしょうか」の項目をご参照ください。
劣化したターゲットへのマイナス影響を打ち消す
ターゲット寿命を伸ばすにあたってもうひとつの重要な要素は、ターゲット寿命の終末期に近づくにつれて劣化したターゲット状態によるマイナス影響を打ち消すことです。エネルギーの蓄積が少なく、かつ効果的なアーク管理が可能な高品質の電源装置を使うことにより、(ノジュールが形成されたものも含めて)劣化が進んだターゲットを使って、図3に示すような現象によって引き起こされるマイナスの影響をほとんど、あるいはまったく生じないようにすることができます。
効果的なアーク管理と蓄積エネルギーを低減することによって、アークに供給される電力を制限してノジュール破裂時の損傷を抑えることができます。これらの機能があれば、薄膜品質を維持できるレベルまでアークエネルギーを抑制しながら、場合によっては、ノジュールが形成された比較的古いターゲットでも使うことができます。このような機能がない場合は、ノジュールの形成が増大すると、まだ一部しか使っていないターゲットでも、プロセスをいったん停止して廃棄、交換しなければなりません。つまり、古いターゲット材料は、使える部分がまだ残っている場合でも、新品のターゲット材料に替える必要があるため、それだけコストが増えることになります。また、システムを完全に停止する必要があるので、スループットにも損失が発生します(アーク管理技術について詳しくは、下記のArc SynchTMの項目をご参照ください)。
ローテイタブルターゲットの使用
ターゲットの利用率が工場の製造コストにとって特に重大な意味を持つ場合、または、図3に見られるような現象を避けたい場合は、ローテイタブル(回転型)ターゲットを使うと効果が上がることがあります。ローテイタブルターゲットはプレーナターゲットよりも高価ですが、プレーナターゲットの利用率が平均約35~50%に留まるのに対して、ローテイタブルターゲットの利用率は約85%に達します。これらの数字は、使用しているプロセス電力方式またはターゲット材料による影響を受けません。
ただし、ローテイタブルターゲットが使えるアプリケーションは限られていますので、注意しましょう。この種のターゲットは、RF電源では簡単には使えません。一般には、AC電源、DC電源、パルスDC電源のプロセスで最もよく利用できます。ただし、製造上の諸条件により、すべてのターゲット材料で使えるわけではありません。
ローテイタブルターゲットには、利用率が高いこと以外に、図3に示すようなノジュール破裂の影響を受けにくいという利点もあります。レーストラック状に侵食が進むプレーナターゲットとは異なり、ローテイタブルターゲットはターゲット全体にわたって均一に侵食が進みます。つまり、ターゲットの両端を除いて、その侵食パターンには、通常は基板両端の外側にできる「エッジ」を生じないため、薄膜品質に悪影響を与えることがありません。一方、プレーナターゲットは、このようなエッジが酸化膜の形成によるノジュール、アーク発生、基板損傷の問題をもたらす状態を引き起こします。
ターゲットクロストークの防止
ターゲットの問題を考えるとき、当面の懸念は利用率の問題に限りません。ターゲットクロストークは、基板のアーク発生、基板およびターゲットの損傷、ならびにその結果として電源装置に損傷をもたらす可能性がある消耗現象です。クロストークはこのほか、望ましい電力レベルへの到達を阻んでスループットを低下させることがあります。
クロストークとはそもそも何でしょうか。フラットパネルディスプレイ(FPD)製造でよく使われる大型基板は、チャンバ当たりのターゲット材料を1ダース以上使うことがあります。これらをすべてひとつのチャンバに収めるには、ターゲット間の間隔を狭くする必要があります。それぞれ電位が異なるターゲットの間隔が狭まると、それらが互いに干渉し合って、前述のような重大な問題を引き起こします。
CEX(位相同期)
AE電源装置の大部分が装備しているCEXと呼ばれる機能は、クロストークを緩和して、それに伴う問題を排除します。通常は「位相同期」と呼ばれるこのCEXは、common exciter(共通励磁装置)を略したものです。この機能は、システムの全電源装置を調整し、その波形をマッチングさせて全カソードを同じ位相に同期させます。図4は、CEXを使用していない場合にカソード間に発生することがある高い電位差を示しています。

図4. 同期が不十分でカソード間に高い電位差が発生したことを示すスコープ表示
CEXには大きな利点があります。まず、設備への投資を無駄にしません。また、電源装置、基板、ターゲットの損傷リスクを減らすことによって、薄膜品質を保護してプロセスダウンタイム発生の可能性を低減する効果もあります。さらに、プロセス安定性を向上させるとともに、大型基板に必要な電源レベルの上昇を促します。AE製品の多くは、CEXならびにそれに関連する利点を実現しています。
Arc Synch™ 技術
Arc Synch™技術はCEXと協調して、ターゲットクロストークその他の条件下で発生するアーク発生を管理する包括的な方法を実現します。CEXと同様に、Arc Synch技術はシステム内の全電源装置を調整して、電源装置が1台でもアークを検出すると、全電源装置をそれに反応させることができます。Arc Synch技術を使わない場合は、アークを検出した装置だけがそれに反応して、それ以外の電源装置は通常運転を続けます。すると、カソードが互いに干渉し合って、基板のアーク発生、基板およびターゲットの損傷、さらにその結果として電源装置に損傷をもたらす可能性があります。Arc Synch技術を使うことによって、アーク検出時にはシステム内の全電源装置が同時に反応してアークを消滅させます。これにより、カソードの再点火、ならびにアーク抑制によるカソードの相互干渉を防止することができます。
Arc Synchならびにアーク管理について詳しくは、AE報告書「金属材料のマグネトロンスパッタリングにおけるアーク抑制」をご覧ください。アーク管理方法、CEX、Arc Synch、もしくはそれ以外の電源管理技術を使ってプロセスを改善する方法を詳しく相談なさりたい方は、電子メールでご連絡ください(宛先: FPDapplications@aei.com)。

プロセスからより多くの利益を搾り出そうと苦労なさっていませんか。
AEのFPD戦略マーケティングスペシャリストのBruce FriesとAE FPD戦略マーケティングエンジニアのKen Naumanが難しい問題にお答えします。ご意見またはご質問がありましたら、電子メールでお送りください(宛先: FPDapplications@aei.com)。Ken Naumanに直接連絡なさりたい方は、電話:+1.970.214.6280または電子メール: Ken.Nauman@aei.comでご連絡ください。
- パルスDC電源の利点はすばらしいと思いますが、スパッタリングレートが心配です。パルスDC電源はパルス反転中にスパッタリングエネルギーを奪いませんか。
- AEのVFP(バーチャルフロントパネル)を使って電源装置を監視制御していますが、VFPがプロセス開発の役に立つことがありますか。
- I経験上、大幅なプロセス改善をもたらす簡単または安価な方法が何か見つかったことはありますか。
- 当社のPVDプロセスの生産性をできるだけ高くして維持するのに苦労しています。どちらに相談すればいいでしょうか。
- FPD製造の収益性を高めるために業界で変えていく必要がある推進要因について、何か良い見通しはありませんか。
- パルスDC電源の利点はすばらしいと思いますが、スパッタリングレートが心配です。パルスDC電源はパルス反転中にスパッタリングエネルギーを奪いませんか。
答: お使いになる電源装置の品質によります。低品質の電源装置は、パルス反転中にスパッタリングエネルギーの損失を生じるので、スパッタリングレートは間違いなく低下します。しかし、AE製の電源装置は、パルス反転中もスパッタリングエネルギーを蓄積します。このエネルギーはその後のパルス中に使われるので、スパッタリングレートとスループットは維持されます。
- AEのVFP(バーチャルフロントパネル)を使って電源装置を監視制御していますが、VFPがプロセス開発の役に立つことがありますか。
答: はい、役に立ちます。 VFPを使ってプロセスを操作し、その結果をパソコンで見ることができます。実際には、新しいレシピを試すのに生産ツールの近くにいる必要さえありません。Ethernetネットワークに接続して遠隔操作・監視することができます。システム起動時またはR&Dモードでは、指定されたプロセス条件をあるツールでエミュレートするのと同時に、新しいレシピを書くこともできます。たいへん便利で柔軟なこの機能を使えば、高価なツールを使う必要も少なくなります。VFP機能を提供しているAE電源装置は数種類あります。詳しくは当方までお尋ねください。
- 経験上、大幅なプロセス改善をもたらす簡単または安価な方法が何か見つかったことはありますか。
答: 思い浮かぶ方法はいくつかありますが、ここではよくある問題をひとつだけ考えましょう。それは、ケーブルの長さと品質です。アーク発生とアーク損失を抑制する方法のひとつは、電源装置とカソード間のケーブルを調べることです。ケーブル内には誘導エネルギーが蓄積されますが、それに使われるケーブルには、それぞれ固有の単位長さ(メートル)当たりインダクタンスがあります。ケーブルを短くして、インダクタンスが低いケーブルを使用することによって、電源装置・ケーブル・カソードで構成されるシステム内に蓄積されるエネルギーを低減させることができます。これによって、アーク発生時に供給される電力が減少します。したがって、電源装置とカソードを結ぶケーブルは、できるだけ短く、インダクタンスが低いものを使用しましょう。
- 当社のPVDプロセスの生産性をできるだけ高くして維持するのに苦労しています。どちらに相談すればいいでしょうか。
答: FPD産業がスループットと歩留まりの向上にこれほど努力を傾注している現状では、現有のPVDプロセスで最大限の成果を引き出すことが不可欠です。アプリケーションやプロセスの開発過程で、AEはOEM先とチームを組んでお客様の最新技術の最適化を支援します。総合力があってサポート対応の良い装置サプライヤーを選べば、新たな技術が利用可能になると同時にお客様のシステムも成長します。
装置サプライヤーのサポートに含まれていたほうがいいと思われるものは次の通りです。
- アプリケーションサポート[1]—AEは、当社が貢献している産業から専門家を採用することで、そのプロセスに関連する機会をサポートしています。その経験を活かせるAEの設計チームはさらに製品開発を進められるので、この活動は現在および将来にわたってお客様にも大きく利することになります。
- プロセス改善製品[1]—お使いのプロセスは、スループット、歩留まり、コスト効率の面で十分な可能性を引き出しているでしょうか。AEの豊富な製品群をご利用いただければ、カスタマイズによる最適化の機会を十分に活用することができます。これによって確実に、お客様のプロセスに最適な製品を受け取ることができます。
- 製品修理サービス[1]—AEは、世界各地の主要製造分野すべてをカバーする便利なフルサービスセンターを提供しています。豊富な知識を持った当社の従業員が、専門家らしいサービスを迅速に提供します。
- 製品アップグレードサービス[1]—製品の継続的改善は、AEとお客様が成功するための重要な鍵となります。当社は、お客様の製品の寿命と性能を伸ばすための改善を提供しています。
[1] お客様の製品に適用されるAEサポートオプションについては、担当の装置サプライヤーにご確認ください。
- FPD製造の収益性を高めるために業界で変えていく必要がある推進要因について、何か良い見通しはありませんか。
答: 現在の市場状況は確かに満足できるものではありません。消費者がもっと多くFPDを買い始めないと、あるいは製造コストが大幅に下がらないと、この事業はいましばらく、満足するにはほど遠い利益水準に甘んじると思われるかもしれません。しかし、楽観的になるだけの十分な理由があります。第一に、FPD技術に対する消費者の関心が強く、それゆえに成長の可能性がたいへん大きいこと。それでも、この可能性が現実の利益に結びつくためには、少なくともあと少しは変化が起こる必要があります。
草創期の半導体産業は、今日のFPD市場にとてもよく似ていました。消費者の関心は高かったのに、売上は低迷していました。半導体産業がその苦境を克服して売上高の拡大を達成し、最終的に業界に持続的な収益をもたらすために、どのような方法を取ったでしょうか。生産性の向上、材料費の適正化など、その要因はいくつかありました。そのような努力が最終製品のコスト削減に結びつき、市場普及率の上昇と消費者需要の拡大を実現しました。
今日のFPD産業にも、かつての半導体産業がたどった足跡と同じような傾向が見られます。エンタテインメントをたいへん好む消費者が、今では不十分と感じるようになったブラウン管技術に代わってFPDを買うようになりました。どの大手コンピュータメーカーも、もはやFPDを高級品と見なすことはなく、その大部分は新しいシステムにFPDを標準装備しています。業界内の提携によってコスト削減がさらに進み、利用と販路の拡大を実現しています。これらはいずれも、市場の状況が好転しつつあり、その傾向が今後も続くことを示す兆候です。