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電源装置の品質評価
お客様のプロセスに適した電源装置を判断する際に、2つの重要な選択肢が関わってきます。そのひとつはプロセス電源方式であり、もうひとつは製品メーカーです。適切な方法を選択して、その設定を最適な形で行ったとしても、現実の使用状況において故障しやすい装置なら、折角の努力も水泡に帰してしまうでしょう。ですから、定評のある高品質の製品を選ぶことが肝要です。
ガスが遮断されると何が起こるか
電源装置が故障すると、お客様のプロセスは停止します。高品質の電源装置であれば、プロセススループットや設備投資を守ることができます。それは単に、厳格なプロセス要求に適合するだけでなく、ガスボトル交換の失敗といった保守作業のミスによって起こる可能性がある破壊的な影響からも機材を保護します。
電源装置の6つの基本性能試験
ガスの供給が切れると、電源装置は自然に壊れてしまうものでしょうか。すでにお使いの電源装置の品質を判断し、または新しい電源装置を選ぶには、以下の試験結果を考慮に入れましょう。これらの試験結果は、検討対象から外すべき粗悪な装置を排除するために、極限的でありながら現実的な条件を示してくれます。
なお、このような試験手順を実施する過程で、品質が不十分な電源装置は自ずと壊れてしまう可能性があります。この試験条件下で電源装置の耐性に十分な保証がない場合、または、新しい電源装置の購入を検討している場合は、下記の問題に対する理論的な検証だけに留めておきたいと思われるかもしれません。しかし、AE製の電源装置はすべて、ここに述べるような厳格な条件に耐えるように設計され、試験に合格しています。
警告!
品質が不十分な電源装置をここに述べた条件で試験すると、危険が生じるおそれがあります。試験の実施中に人員および機材を保護するために、適切な安全対策を講じてください。
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試験 1
電源装置を最大定格出力で動かします。それからガス供給を突然停止します。この試験条件は、作業員がガスの充填を怠り、またはガスボトルの交換に失敗した状態を再現しています。このとき、電源装置はどのように反応するでしょうか。それでも正常に機能し続けるでしょうか。ただ単に高電圧・開路条件に切り替わるだけでしょうか。それとも、壊れてしまうでしょうか(ここにいう「壊れる」とは、発煙、発火その他の明らかな不具合が現れる状態も含まれます)。
それでも電源装置が完全に機能している場合は、次の試験に進んでください。
試験 2
ガスの供給を再開します。試験 1に耐えた電源装置がこの段階で壊れてしまいましたか、または正常動作状態に復帰しましたか。
それでも電源装置が完全に機能している場合は、次の試験に進んでください。
試験 3
試験1および2を通過した電源装置を、今度はフルメタルモード(高電圧・低電流)で動かしてください。
それでも電源装置が完全に機能している場合は、次の試験に進んでください。
試験 4
圧力を少しずつ、4 Torr台の半ばまで低下させます。電源装置は、ガス圧力が欠乏したこのような条件にも耐えるように設計されているべきです。
それでも電源装置が完全に機能している場合は、次の試験に進んでください。
試験 5
お使いの電源装置が、高速かつ極度のインピーダンスの変化(下記「ヒステリシス曲線」参照)に対応できるかどうかを試すには、まずフルアルゴン・フルメタルモード(高電圧・低電流)で運転します。それからすぐに、フル酸素・フル反応モードで最大定格出力運転に切り替えます。その後ふたたび、フルアルゴンモードで最大定格出力運転に切り替えます。

ヒステリシス曲線
それでも電源装置が完全に機能している場合は、次の試験に進んでください。
試験 6
お使いの電源装置が試験1~5を問題なく通過したら、それを極度のアーク条件下で観察してください。電源装置は、薄膜品質が損なわれる前にアークをすばやく検出して消滅させていますか。
結論
電源装置がこれらの試験のいずれかに合格しなかった場合は、プロセススループットや設備投資を守るのに十分な品質ではありません。このように厳格な試験条件に耐えるように設計された電源装置をお求めでしたら、どうぞAEにご相談ください。AE製の電源装置は、ここに述べた試験条件も含めて、現実の運転条件で性能を維持するようにできています。また、必要に応じて最新型の保護回路が装置の電源を停止することによって、電源装置を損傷の危険から守ります。
「ダグに聞こう!」に投稿してみませんか
これらの試験の観察結果を電子メールでお送りください。良い結果でも、悪い結果でも、または戸惑うような結果でも何でもかまいません(宛先:sputtering@aei.com)。説明文、データ、写真など何でも歓迎します*。
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* AEに対して次号のニュースレターでの情報掲載を許可する旨の文面をお書き添えください。実名掲載または匿名表示のご希望の別もお知らせください。
午前2時に電話をもらわないために ―最もよくあるプロセス上の問題に対するトラブルシューティング
突然起こるプラズマ消失、予期せぬピンホールの発生、ならびに薄膜品質全体の急激な低下は、プロセスエンジニアが午前2時でも電話をもらう3つの主な理由です。以下の項目は、このような電話をかける必要が発生する前に、これらの現象に共通して見られる原因を示しながら、プロセスを正常な状態に戻すためのソリューションについて説明します。
突然起こるプラズマ消失
プロセス電源方式の選択によっては、突然起こるプラズマ消失の原因となることがよくあります。たとえば、反応モードで使われるストレートDC電源のように、電圧を周期的に反転させない方式の電源装置を使う場合は、アノード(陽極)側に誘電体膜の蓄積を生じる可能性があります。このような蓄積が発生すると、電子がカソード(陰極)からアノードへと移動できなくなります。するとインピーダンスが上昇し、その結果、電圧が上昇します。このような状況によってアークの発生が激化しますので、そこで何らかの介入が行われないと、その増大によってついにはプラズマが消失し、プロセスが完全に故障してしまいます。
このようなプロセスでアーク発生による「死の連鎖」を防ぐには、どうすればよいでしょうか。まず、電源方式をAC電源またはパルスDC電源に替えることを検討してみましょう。そのための意思決定プロセスについて詳しくは、2007年第1四半期『スパッタ・スポットライト』ニュースレターの「電源装置選択マトリクス」をご覧ください。
それ以外に考えられるプラズマ消失の原因には、磁力が弱い、ターゲット材料の品質が不十分、それに、単なる電力の損失などがあります。突然起こるプラズマ消失に関するそれ以外の可能性ならびに対処法について詳しくは、ダグにご相談ください。
ピンホール
ピンホールの基本的な原因は、過大なアークエネルギーです。ピンホールが発生している場合は、電源装置がアーク発生中に低蓄積エネルギー状態を維持できないか、または、アーク管理設定が誤っています。
低蓄積エネルギー状態を維持できないのは、その電源装置に固有の問題です。エネルギーがほとんど蓄積しない製品を最初から選びましょう。蓄積エネルギーを極めて低く抑える性能にかけては、AE製電源装置はプロセス電源装置業界をリードしています。たとえば、Crystal AC電源装置の蓄積エネルギーは、出力1 kWにつきわずか1 mJ未満です。
市場に出回っているある種の電源装置は、アーク管理設定方法が非常に複雑です。それを理解しようとして時間を浪費した挙句に誤って設定する危険を冒すくらいなら、この機能をオフにして使ったほうがいいかもしれません。アーク管理パラメータを簡単に理解して設定できる電源装置を選びましょう。AE製電源装置なら、検出時間、オフ時間、トリップレベルを難なく設定することができます。
プロセス電源方式の選択は、これ以外にもピンホールの発生に影響を及ぼします。ピンホールの防止が極めて重要になるアプリケーションについては、AC電源やパルスDC電源は優れたソリューションとなります。そのための意思決定プロセスについて詳しくは、2007年第1四半期『スパッタ・スポットライト』ニュースレターの「電源装置選択マトリクス」をご覧ください。
薄膜品質全体の急激な低下
薄膜品質全体に突然発生する問題をよく引き起こしている主な原因は、ターゲット材料が古い、ガスおよび(または)圧力ゲージの欠陥、もしくは真空チャンバの漏れです。
プレーナターゲットの有効寿命が近いと、そのレーストラックのグルーブ全体にわたってクロススパッタリングを生じる傾向があります。これがプラズマ内で分子衝突を引き起こし、それによってアークが発生することがあります。このような衝突によって、レーストラックの両側における再成長が進み、アーク発生をさらに増大させます。アーク発生が徐々に増加した結果、最終的には圧倒的な量まで増えてプロセスを停止させます。この場合のソリューションは、ターゲットを交換することです。

レーストラック侵食パターン
ガスゲージの不具合によってガス混合にエラーが発生し、または圧力計が故障すると圧力が上昇して、望ましいレベルを超過することがあります。圧力が上昇すると、プラズマ内で分子衝突が増加するために、成長薄膜がより多孔質になります。どちらの場合も、薄膜品質を元通り正常にするには、ガスおよび(または)圧力計を交換します。
薄膜品質の問題では、真空チャンバの漏れもよく疑われる原因のひとつですから、使用するチャンバの気密性をつねに点検してください。
ダグに聞こう!
お客様の工場のスパッタリングプロセスでは、スピューイング(噴出)やスピッティング(吐出)が起こりませんか。
AEのシニア・フィールドアプリケーション・エンジニア、「ダグ」ことDoug Pelleymounterは、あらゆる種類のスパッタリングアプリケーションに取り組み続けて32年(犬の年齢にすると実に224歳!)以上という豊富な現場経験の持ち主です。このコーナーでは、アプリケーション上の難しい問題についてダグが皆さんと一緒に考えます。ご意見、ご質問がありましたらどうぞ電子メールでお送りください(宛先: sputtering@aei.com)。
- プレーナ(平面型)ターゲットとローテイタブル(回転型)ターゲットの利用率はどう違いますか。
- プレーナターゲットとローテイタブルターゲットでは、ターゲット寿命全体に影響を及ぼす侵食パターンにどのような違いがありますか。
- 一般にはパルスDC電源とAC電源を使って製造するとストレートDC電源より薄膜品質が向上するということでしたが、薄膜品質には実際にどのような違いがあるのでしょうか。
- スパッタリングレートを最適化するには、どのような方法を取るといいでしょうか。
- HPPMSと呼ばれる次世代の技術を使えば極めて平坦性の高い均質な薄膜を生産できるが、この技術はまだそれほど広く普及していないと聞きました。既存の設備を使ってこれと同じような結果をもたらす代替技術はありますか。
- プレーナ(平面型)ターゲットとローテイタブル(回転型)ターゲットの利用率はどう違いますか。
答: 平均的には、プレーナターゲットの利用率が約35%であるのに対し、ローテイタブルターゲットのそれは約85%です。これらの数字は、使用しているプロセス電力方式またはターゲット材料によって左右されません。ただし、回転式カソードは、RF電源装置には使えません。回転式カソードは一般に、AC電源、DC電源もしくはパルスDC電源プロセスに適しています。
- プレーナターゲットとローテイタブルターゲットでは、ターゲット寿命全体に影響を及ぼす侵食パターンにどのような違いがありますか。
答: プレーナターゲットとローテイタブルターゲットでは確かに侵食パターンが異なりますが、ターゲットの寿命全体にわたって、プロセスの取扱方法にはほとんど違いがありません。ローテイタブルターゲットでは、ターゲットの厚さが均一に減少するために、マグネットがターゲット表面に接近する原因となります。その結果、電流が上昇し電圧が低下します。それに対して、プレーナターゲットの侵食パターンは均一ではなく、この場合は電流の低下と電圧の上昇が認められます。
- 一般にはパルスDC電源とAC電源を使って製造するとストレートDC電源より薄膜品質が向上するということでしたが、薄膜品質には実際にどのような違いがあるのでしょうか。
答: 下の写真は、薄膜品質の違いが最も大きく現れた例です。

ストレートDC電源(上)とパルスDC電源(下)によって製造された薄膜品質
情報出所:最先端材料・表面工学センター(英国ソルフォード大学)


ストレートDC電源(上)とAC 電源(下)によって製造された薄膜品質

- スパッタリングレートを最適化するには、どのような方法を取るといいでしょうか。
答: このご質問に対する答えは、前回のこのコラムでお答えした「どれくらいのスパッタリングレートが実現可能でしょうか」という質問の良いフォローアップになります。
ごく大まかにいえば、圧力が低いほど、スパッタリングレートと薄膜品質は向上します。その理由は、プラズマ内の分子衝突が少ないほど、プラズマの照射距離(スパッタリングされた粒子がターゲットから基板まで到達する能力)が長くなるからです。つまり、できる限り最小限の圧力でスパッタリングができれば最も良いのですが、ガス欠乏状態に陥ると電源装置に問題が発生する原因となりますので、当然ながらそれは避ける必要があります(前述「電源装置の品質評価」参照)。
実行できる第二の対策は、ガウスメーターによりお使いのマグネトロンのバランスをチェックすることです。マグネトロンのバランスが取れていないと、プラズマの照射距離が広がって電子が過剰に発生するため、基板の熱と薄膜品質に影響を及ぼします。マグネトロンのバランスが取れていれば照射距離が合って、特にカソードと基板の距離が大きい場合のスパッタリングレートに有効です。

マグネトロンのバランスが取れていない場合(上)と取れている場合(下)

第三の対策は、マグネットの強度をチェックすることです。マグネットの強度が高いほど、プラズマの照射距離は大きくなります。ここでひとつ注意すべき点は、その結果としてスパッタリングレートと薄膜パッキング密度が大きくなる一方、マグネットの強度が高いほどターゲット材料のグルーブが深くなり、利用率が減少します。
とはいいながら、スパッタリングレートは様々な様相を持つ複雑な問題には違いありません。個々の状況をお知らせいただければアドバイスできますので、どうぞお気軽に電子メールでお問い合わせください(宛先:sputtering@aei.com)。
- IHPPMSと呼ばれる次世代の技術を使えば極めて平坦性の高い均質な薄膜を生産できるが、この技術はまだそれほど広く普及していないと聞きました。既存の設備を使ってこれと同じような結果をもたらす代替技術はありますか。
答: 幸い、HPPMS(high-power, pulsed magnetron sputtering、高出力パルスマグネトロンスパッタリング)と同じレベルの平坦性を実現する技術はすでにあり、簡単に利用できます。この技術は、RF電源、パルスDC電源の2つの電源方式を組み合わせたものです。もうひとつおまけに、これはまだ比較的新しい方法ですが、RF重畳パルスDC(RF-superimposed pulsed DC)と呼ばれるスパッタリング技術もかなり前から開発されていて、すでにある程度利用できる程度の情報が集まっています。この方法について詳しくは、AEの「電源装置選択マトリクス」ならびに当社の「RF重畳DCプロセスにおけるアーク抑制」アプリケーションノートをご参照ください。