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電子メールニュース『スパッタ・スポットライト』
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Sputter Spotlight masthead

適切な電源装置を選択するテクニック


プロセス能力に関して賢明な意思決定を行うことは、スパッタリングレート、薄膜品質、設置コスト、複雑性に関する具体的な目標を達成するのに役立ちます。電源方式にはそれぞれ得失があります。つまり、はっきりした正解はありません。お客様は、各プロセスの優先事項に鑑みて、ここに掲載したアドバイスを参考に、ご自身で判断していただくしかありません。

電源装置の選び方:概説

表1は、電源装置を選択する際の主な要素について、各電源方式の定格をまとめたものです。使用するプロセスに最も重要な要素を表のいちばん左の列で探し、これらのパラメータで最も定格の高い電源装置を選ぶといいでしょう。この表で選んだ方式の性能データを、あらゆる重要基準に照らして検討してみてください。それから、最終的な結論を出す前に、検討すべき要素についてさらに詳しい資料をお読みください。

表1. 電源装置選択マトリクス

Power supply selection matrix

 

プロセス設定の詳細


この項目では、スパッタリングプロセスの設定に共通する問題について説明します。上の表を参照しても答えが見当たらない問題にお答えしながら、電源装置の設定についてアドバイスします。

最高の薄膜品質を求めるならRF電源を選ぶ

薄膜品質が唯一の優先事項とすれば、プロセス電源には明らかにRF電源装置を選ぶべきです。RF(高周波)エネルギーによってプラズマ中で電子が強く励起されます。その「ハンマー効果」によって生じた大きな力でイオンが基板に衝突します。これによってパッキング密度が高まり、ピンホールの発生を抑えながら非常に平坦で均質な薄膜を形成することができます。

RF電源の主な短所は、スピードが非常に遅いことです。他の方法ではいずれもスパッタリングレートが70%以上、最大100%に達するのに対して、RF電源は20%に過ぎません。しかし、たとえば宇宙空間で使用するアンテナアレイやソーラーパネルのように極めてクリティカルなアプリケーションに用いられる製品であれば、このような低速も容認されるでしょう。つまり、優先順位をどこに置くかによって判断します。

RFの設定

比較的小さなカソード(1~1.5 m=3.3~4.9フィート)を使ったプロセスでは、マッチングネットワークの配置が正確なRF設定のカギになります。負荷供給電力を最大にするには、マッチングネットワークをできるだけカソードの近くに配備することです。これによって、マッチングネットワークからの出力ケーブルが短くなります(このケーブルが長いほど負荷が大きくなる)。つまり、ケーブルが短ければ短いほど、供給電力とプロセス再現性が向上することになります。

カソードが小さい場合、RF設定でもうひとつ重要な要素は接地(アース)です。アース線はできるだけ短く、また表面積が最大になるように太いものを使用するとともに、すべての接続をクリーンに保って抵抗を減少させる必要があります。

残念ながら、波長モードのせいで、大きなカソードを使うプロセスに適用できる簡単なガイドラインはありません。小さなカソードを使うRFプロセスと比べてもともと設定が複雑で、さらに多くの試行錯誤を繰り返すことになります。

RF電源には、回転式カソードが使えません。一般に、この種のカソードが最も効果を発揮するのはAC電源、DC電源もしくはパルスDC電源を使ったプロセスで、この場合はターゲット利用率を80~90%に向上させることができます。

AC電源とRF電源からの選択

AC電源 とRF電源のどちらを選ぶかは、ターゲット材料および(または)目指す薄膜品質によって決まります。カソードの長さが13.56 MHzの4分の1以上になると、薄膜の厚さにばらつきが生じることがあります(詳細は後述)。

AC電源とパルスDC電源からの選択

AC電源とパルスDC電源のどちらを選ぶかは、システム内のカソード数によって決まります。バッチシステムに使うなら、パルスDC電源を選んだほうがいいでしょう。複数のカソードを使う新型インラインシステムでは、パルスDC電源よりもAC電源を選んだほうがいいでしょう。よりクリーンで寿命の長いプロセスを実現することによって、ごくわずかな投資でも大きな投資収益率(ROI)が得られ、結果的に薄膜品質も向上します。

改造する場合は、次のようにお勧めします。

  • すでにAC電源を搭載しているシステムを改造する場合は、AC電源をそのまま使う。
  • カソードが1個しかないDC電源を搭載しているシステムを改造する場合は、パルスDC電源に切り替える。
  • カソードの追加が可能で、DC電源を搭載しているシステムを改造する場合は、AC電源が持つ前述のROI上の利点を考えてAC電源に切り替える。

DC電源とパルスDC電源からの選択

パルスDC電源は、つねにストレートDC電源よりも賢明な選択です。というのは、薄膜品質が向上し、製造キャンペーンも長期化できるからです。DC電源を搭載したシステムの大部分は、パルシング技術が利用可能になる以前に設定されたものです。

低周波パルシングを追加すると、より多くの電子を励起してハンマー効果を生じます。これにより、薄膜の平坦性、パッキング密度ならびに透過率が向上し、ピンホールの発生を抑制することができます。

パルスDC電源を使ったプロセスではこのほか、ストレートDC電源よりも短時間で周期の短いチャンバクリーニング作業が必要となります。これにより、プロセス生産性と歩留まりが飛躍的に向上します。ストレートDC電源とパルスDC電源の間では、コストの差が大きな決定要因になることはありません。パルスDC電源は、ストレートDC電源よりもずっと安いターゲット材料を使うことができるからです。詳しくは、「ストレートDC電源よりもパルスDC電源/AC電源を選択してターゲットコストを削減する」をご覧ください。

ストレートDC電源よりもパルスDC電源/AC電源を選択してターゲットコストを削減する

一般に、AC電源とパルスDC電源は、ストレートDC電源を使った方法よりも優れた薄膜品質を生み出すことができます。これにより、AC電源またはパルスDC電源を使ったプロセスで、比較的グレードの低いターゲット材料を使ってコストを大幅に節約することができます。どのDCスパッタリングプロセスでも、指状の突起が生成されて、隣接する膜層に突出、貫通することがあります。そのため、DC電源プロセスでは、グレードの高いアルミニウム製の高価なターゲット材料を使う必要があります。一方、AC電源またはパルスDC電源プロセスでは、薄膜品質にマイナスの影響を及ぼすことなく、それよりもずっと手頃な価格のターゲット材料を使うことができます。

パルスDC電源アクセサリを追加して薄膜品質の向上、キャンペーン時間延長、コスト節約を図る

AEのPulsar® アクセサリのようなDCパルシングアクセサリを使えば、コストの大幅な上昇を招くことなく、薄膜品質を向上させるとともに、キャンペーン時間を延長することができます。パルシングアクセサリを簡単に取り付けるだけで、あらゆる種類のDCスパッタリング電源をパルスDC電源に改造することができます。その結果、電子エネルギーが上昇し、薄膜の平坦性が向上します。また、これによってチャンバクリーニングの必要が減少するので、投資収益率(ROI)が飛躍的に向上します。これにより、製造キャンペーンの長さも大幅に伸びます。前述したように、パルシングを使えば安価なターゲット材料を利用できるので、著しい節約効果が期待できます。

RF DC電源とRFパルスDC電源からの選択

一般的には、RFパルスDC電源のほうがストレートRF DC電源よりも賢明な選択です。「DC電源とパルスDC電源からの選択」でも説明した薄膜品質、生産性ならびにコスト面の利点は、これについても当てはまります。

RF DC電源とRFパルスDC電源のプロセス設定

RF DC電源とRFパルスDC電源を組み合わせると、複雑性とプロセス設定コストがある程度上昇します。これら2種類の異なる電源装置を同時に使用する際に特に問題となるのは、アーク管理です。

このような構成でDC電源またはパルスDC電源装置を使用すると、RF電源装置よりも、アークの検出と対応をより正確に行うことができます。したがって、アーク発生時にDC電源、RF装置が同時に停止するためには、使用するDC電源がRFユニットを制御する機能を持っていなければなりません。また、アークが消滅したら、電源供給をただちに再開できなければなりません。今日市場に出回っているDC電源装置の機能は、この点において多種多様です。DC/RF制御機能が内蔵されていない製品もあれば、強力な制御機能を備えた機種もあります。たとえばAEのArc-Sync™技術によって実現された Pinnacle® Plus+ DC電源装置は、接続されたCESAR® RFユニットを簡単かつ効果的に制御してアーク管理を実行します。

ダイオード/マグネトロンスパッタリングからの選択

スパッタリング速度、薄膜品質、ターゲット材料に関する優先順位をどこに置くかで、ダイオードスパッタリングとマグネトロンスパッタリングのどちらを選ぶべきかが決まります。ダイオードスパッタリングアプリケーションは、ターゲット材料を100%利用できるほか、より優れた薄膜品質を生み出すことができます。ただしこの場合、スパッタリングレートはマグネトロン方式よりもずっと低速になります。マグネトロンスパッタリングアプリケーションは高速レートを誇りますが、ターゲット材料のせいぜい50%しか利用できません。この場合、ターゲット材料は、マグネトロンの形状に沿って(「レーストラック」と呼ばれる)楕円形の部分だけが使われ、それ以外は手つかずのまま残ってしまいます。

 

ダグに聞こう!

Doug Pelleymounter photo

お客様の工場のスパッタリングプロセスでは、スピューイング(噴出)やスピッティング(吐出)が起こりませんか。

AEのシニア・フィールドアプリケーション・エンジニア、「ダグ」ことDoug Pelleymounterは、あらゆる種類のスパッタリングアプリケーションに取り組み続けて32年(犬の年齢にすると実に224歳!)以上という豊富な現場経験の持ち主です。このコーナーでは、アプリケーション上の難しい問題についてダグが皆さんと一緒に考えます。ご意見、ご質問がありましたら電子メールでお送りください(宛先: sputtering@aei.com

  1. ターゲット材料についてひとつ質問があります。プロセス電源装置にRF電源を使うべきか、それともAC電源またはDC電源を使うべきかはどのように判断したらいいでしょうか。
  2. それでは、AC電源とDC電源はどのように選んだらいいでしょうか。
  3. ストレートDC電源、パルスDC電源のどちらが当社のプロセスに適しているかについては、どのように判断したらいいでしょうか。
  4. どれくらいのスパッタリングレートが実現可能でしょうか。
  5. 当社のスパッタリング装置のメニューシステムでアーク設定点を目盛りのどの位置に合わせたらいいでしょうか。  
  6. 当社のスパッタリングレートはずっと一定でしたが、今日になって突然変わった原因がわかりません。

  1. ターゲット材料についてひとつ質問があります。プロセス電源装置RF電源装置を使うべきか、それともAC電源 または DC電源を使うべきかはどのように判断したらいいでしょうか。
    答: RF電源装置を使う必要があるかどうかは、ごく普通の抵抗計があれば簡単に判断することができます。抵抗計の2本のリードをターゲット表面の任意の場所に当ててください。抵抗計が無限(∞)示した場合、そのプロセスにはRF電源装置が必要です(たとえば、純粋なアルミニウム製ターゲットでは無限を表示します)。一方、抵抗計が無限以外を示した場合は、AC電源 または DC電源を使いましょう。


  2. それでは、AC電源とDC電源はどのように選んだらいいでしょうか。
    答: この場合は少し注意を要します。そのプロセスがバッチプロセスなら、DC電源またはパルスDC電源で十分でしょう。ここで気になるのは、プロセス実行中のアノード消失の問題です。DC電源を使ってSiO2の反応性スパッタリングを行う場合は、アノード(フローティングまたはチャンバ)によって、しばらくするとSiO2絶縁膜が形成されます。この絶縁膜は、電子が電源装置に戻ろうとする流れを阻止します(+リターン)。すると、プロセス電圧が上昇し、大きなアークの発生と電力の低下によってプロセス性能が低下し、最後には使えなくなってしまいます。ここでカギとなるのは、プロセスの持続時間と加工したい材料の量を知ることです。そのためには、使用しているチャンバの形状とスパッタリングプロセスを綿密に理解し、熟知しておく必要があります。アノードを長期間クリーンな状態に保っておくには、ちょっとしたおもしろいコツがあります。パルスDC電源を使うのもそのひとつです(それ以外については後述)。

    絶縁材料を何日間、何週間にもわたってスパッタリングしなければならないインラインプロセスでは、答えは単純明快です。この場合はAC電源が最適です。短所は、第2のカソードの購入、設置、保守が必要になることです。AC電源を使うことによって、平坦性、ピンホールの抑制、パッキング密度の向上を含めて、薄膜品質が向上します。


  3. ストレートDC電源、パルスDC電源 のどちらが当社のプロセスに適しているかについては、どのように判断したらいいでしょうか。
    答: つねに優れた薄膜品質を生み出すのはパルスDC電源ですが、ストレートDC電源のほうがいくらか経済的です。とはいえ、最初からパルスDC電源を導入すれば、新たに高価なカソードを購入しなくても済みます。パルスDC電源を使えば、薄膜の平坦性、パッキング密度、透過率が向上するとともに、ピンホールの発生を抑えることができます。


  4. どれくらいのスパッタリングレートが実現可能でしょうか。
    答: その質問にひとことで答えられたら、私は有名な金持ちになれるでしょう。その答えは装置構成によって変わってきます。つまり、動的に変化します。スパッタリングレートは次のような要素によって決まります。
    • チャンバの形状およびカソード/アノードの設計  
    • 動作圧力  
    • ガスの組成  
    • ターゲットの厚さ  
    • 磁場の強さ  
    • 動作電源 
    • ターゲットと基板の距離

    それを前提に申し上げると、レートの設定は1秒当たり2~10 Å程度になるでしょう。正直なところ、スパッタリングシステムの最適化は、芸術と科学の両方の要素があります。それは、コスト、スパッタリングレート、薄膜品質の間で兼ね合いを図ることです。本当のカギとなるのは、使用しているチャンバの形状とスパッタリングプロセスを綿密に理解し、熟知しておくことです。初期設定レートを実際のプロセスよりも長めに設定して、使用するチャンバとプロセスのクセを知るようにしましょう。まず低出力をかけて初期レートで運転し、その後、作業ごとに出力を少しずつ上げていくことで、現実のプロセスに何が期待できるかがわかります。

  5. 当社のスパッタリング装置のメニューシステムでアーク設定点を目盛りのどの位置に合わせたらいいでしょうか。
    答: この質問もすぐに答えられたら、有名な金持ちになれるでしょう。これもまた、次のようないくつかの変数によって変わってきます。
    • ターゲット材料と厚さ
    • カソードの大きさ
    • 動作電圧(ガスの組成、磁場の強さ、ならびにチャンバ圧力による影響を受ける)

    通常なら、アークトリップ設定点として、動作電圧の10%を推奨します。ただし、ターゲットが大きいほど、アークエネルギーが全体に分散するのに時間がかかるので、その場合はオフタイムを長く取る必要があります。ターゲットの表面積が大きければ大きいほど、アーク管理のオフタイムを長くしてください。


  6. 当社のスパッタリングレートはずっと一定でしたが、今日になって突然変わった原因がわかりません。
    答:  回答に先立って、次のことを考えてみましょう。前回のシステム操作で最後に行った手順は何でしたか。十中八九はこれで答えが見つかるはずです。それでもまた答えが出ない場合は、次の点を調べてみましょう。
    • いつもよりもアークが多く見えていませんか。
    • プラズマの色が変わっていませんか。
    • 電源装置の電圧と電流が変わっていませんか。
    • いつもと同じベース圧力にすることができますか。
    • いつもと同じガス流量で、同じプロセス圧力が得られますか。
    • 立ち上がり試験のレートに同じ時間をかけていますか。

    上記を全部調べてみると、チャンバのどこかに漏れが見つかることがあります。また、チャンバの清浄度に関係していることもあります。これらの問題については、改めて詳しく検討しましょう。